呼吸器内科は、肺や気管支、胸膜などの疾患や症状を診療する科目です。
当院では、風邪の諸症状、気管支炎、肺炎、気胸などの急性疾患から、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺結核などの慢性疾患から肺がんまで、さまざまな呼吸器疾患の診断と治療を行っております。
呼吸不全を合併した場合には、在宅酸素療法を導入致します。
睡眠時無呼吸症候群に対しては、簡易検査を施行後、方針を決定します。在宅持続陽圧換気療法も行なっています。
肺がんのセカンドオピニオン、地域連携パスを導入した経過観察、治療継続も受け付けています。
肺癌治療にも精通しており、ノーベル医学賞で注目されたオプジーボを群馬県内で初めて使用し、読売新聞にも取り上げられました。
など
入院、精密検査を要する場合には、対応可能な病院を紹介いたします。
他にも気になる症状がある方は、なんでもご相談ください。
気管支喘息は、空気の通り道である気道に慢性的に炎症が起こることによって、長引く咳や息苦しさ、喘鳴(ヒューヒュー・ゼイゼイといった呼吸音)を引き起こす病気です。
【症状】
以下のものが当てはまるもの場合には気管支喘息の可能性があります。
【原因】
一般的な気管支喘息の原因には、「アトピー型」と「非アトピー型」があります。
特定のアレルゲンに対してアレルギー反応を起こすことが原因となる喘息です。アレルゲンとはアレルギーの原因となるもので、ハウスダストや花粉、ダニやペット、食べ物などがあります。
子供の喘息に多いのが、このアトピー型です。
発作の原因にアレルギーが関係していない喘息です。非アトピー型の原因は明らかになっていません。
大人の喘息に多いのが、この非アトピー型です。
【治療法】
気管支喘息患者さんの気道は症状がない時にも慢性的に炎症を起こしているため、日頃から「炎症を鎮める」治療を続けておくことが、症状をコントロールするためにとても大切です。
そのため、治療の基本は、長期管理薬と発作治療薬を使用した薬物治療になります。
長期管理薬とは、発作が起こらないように毎日続ける薬で、発作治療薬とは発作が起こったときに発作をしずめるための薬です。
喘息治療でよく使われる薬には、以下のようなものがあります。
ステロイド薬には炎症を抑える強い効果があり、長期管理薬として使用されます。薬の形状は、吸入薬、飲み薬、点滴とさまざまです。
現在はステロイド薬に気管支拡張薬(咳止め)を加えた吸入薬が主流となっています。
β2刺激薬は、アレルギーによる気道の炎症を抑えたり、気道の収縮を抑える効果があり、長時間作用型と短時間作用型があります。薬の形状は、吸入薬、貼り薬、飲み薬とさまざまです。
長時間作用型は長期管理薬として使用されます。
短時間作用型は発作治療薬として使用されます。素早く気管支を拡げる効果があるため、発作治療薬の中では中心的な存在です。
ロイコトリエン受容体拮抗薬は、炎症を抑えて、気道が細くなり空気の通る量が少なくなってしまう現象(気流制限)を改善する効果があります。
長期管理薬として使用され、薬の形状は、飲み薬のみです。
テオフィリン薬は、気管支を広げる効果があり、長期管理薬として使用されます。
薬の形状は、飲み薬と坐薬があります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD以下略)は、たばこ煙を主とする有毒物質を長期間吸入することによって肺や気管支に慢性的に炎症が起きる疾患です。徐々に呼吸機能が低下して慢性の呼吸困難・呼吸不全に陥ります。
喫煙習慣を背景に中高年に多く発症する生活習慣病といえます。
【原因】
COPDの最大の外因性危険因子は喫煙で、COPDの発症に関与することが立証されていて、日本のCOPD患者の9割以上が喫煙者という報告があります。
【症状】
COPDの初期段階では自覚症状がほとんどありません。
病気が進行すると、呼吸の効率が悪化して、慢性の咳、痰の増加、体を動かした時に出現する息切れなどの症状が出てきます。
重症になると、通常の呼吸が困難になり、息苦しさのために日常生活ができなくなったり、かぜなどをきっかけに急に症状が悪化すること(増悪または急性増悪)を繰り返すことになります。
【検査と診断】
慢性の咳、喀痰、体を動かした時の息苦しさなどの症状があり、喫煙歴などの危険因子をもつ中高年者の場合にCOPDが疑われます。
当院で、スパイロメトリー検査(肺機能検査)やレントゲン検査を行い、必要に応じ胸部CTを施行し、方針を決定していきます。
【治療】
COPDの発症を予防し進行を遅らせるためには、禁煙することが最も重要です。禁煙することがどうしても難しい方は、当院で禁煙外来を実施していますのでご相談ください。
COPDに対する治療には、抗コリン剤や気管支拡張剤の吸入や貼付剤などを使用します。場合によっては吸入ステロイドを併用することもあります。
息切れが強く、酸素濃度が低下する患者さんには、在宅酸素療法を導入します。
COPDは全身疾患です。息切れが強く、動かなければ、筋力が低下し、動けなくなります。
栄養摂取も、薬物療法以上に必要です。骨粗鬆症や食欲低下にも細心の心配りが必要です。
また、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種も大切です。インフルエンザワクチンは、増悪によるCOPD死亡率を50%低下させることが報告されています。
間質性肺炎は「肺炎」とついていますが、細菌やウイルス感染によって肺胞(肺実質)に炎症を起こす一般的な細菌性肺炎とは異なり、肺胞の外(肺間質)が線維化することにより肺の組織が壊れて、肺が徐々に硬く縮んでいく病気です。
病気が進行すると、肺活量や肺拡散能(酸素の取り込み能力)が普通の人の半分以下になるなど、少し動いただけでも息切れがひどくなります。最終的には酸素療法や人工呼吸器による治療が必要となってきます。
【原因が特定できない特発性間質性肺炎】
間質性肺炎は原因が不明な場合が多く、その場合は「特発性間質性肺炎」とよばれます。生活環境や遺伝子が影響すると考えられています。
一般的な細菌性肺炎と比べて治療が困難であるため、公費負担対象の難病に指定されていて、医療費の助成があります。
特発性間質性肺炎には以下の種類があります。
など
医療費の助成の基準など、詳しいことについてはご相談ください。
【原因が特定できる間質性肺炎】
特定できる主な原因は、以下の通りです。
など
【症状】
間質性肺炎の進行するスピードは原因などによって異なりますが、長年かけて少しずつ症状が進み、日常生活に支障をきたすまでに数年かかります。
自覚症状が現れるころにはかなり病状が悪化している場合が多いのが特徴です。
間質性肺炎の代表的な症状は次の2つになります。
間質性肺炎に伴う呼吸困難は、いくら息を吸っても、酸素が入ってきているように感じない息苦しさがあります。
最初は階段をのぼるときに感じる程度ですが、症状がすすむと呼吸不全の状態となり、着替えなどの動作でも息切れが出て、日常生活に支障をきたすようになります。
肺が持続的に刺激され続けることにより、季節に関係なく咳がでます。通常の肺炎では痰を伴う湿った咳がでますが、間質性肺炎では、痰を伴わない乾いた咳がでます。
【治療】
間質性肺炎の治療法は、主に以下の薬を用いた薬物療法になります。
しかし、薬が効きやすい病型とそうでないものとがあり、いずれの薬剤も副作用が多いため、間質性肺炎の進行が緩やかな場合には、上記の薬剤を使用せずに、咳や痰が多い場合に鎮咳剤や去痰剤を使うなどの対症療法を行うことがあります。
血液中の酸素濃度が低くなり、日常生活に支障がでる場合には、酸素濃縮器や液体酸素、酸素ボンベを設置して、鼻から酸素を吸入する酸素療法を行います。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠時に何度も呼吸が止まったり、気道の空気の流れが悪くなったりする疾患です。
※SASの定義
一晩(7時間)の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上、または睡眠1時間あたりの無呼吸数や低呼吸数が5回以上おこる状態
睡眠時無呼吸症候群を放置していると、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が約3~4倍高くなるという報告があり軽視すると怖い病気です。しかしきちんと治療すれば、健常人とほとんど生存率は変わらないと考えられています。
【原因】
睡眠時無呼吸症候群の原因には、大きく2つの理由があります。
(1)閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)
約9割の患者さんの原因は、空気の通り道である気道が部分的あるいは完全に閉塞してしまうことによっておこります。
気道が閉塞してしまう主要因として、
などがあげられます。
(2)中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)
もう一つの原因(約1割の方)としては、脳から出ている呼吸指令(呼吸中枢)の異常が考えられます。この中枢性睡眠時無呼吸の原因は様々あると考えられていますが、心臓の機能低下が30%~40%だと言われています。
【症状】
主な症状は、
などがあげられます。
日中の眠気は、作業効率の低下、居眠り運転事故や労働災害の原因にもなります。
【睡眠時無呼吸症候群の簡易検査】
前記のような症状があり、問診で睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、ご自宅で専用機器を使って行う「簡易検査」を実施します。手の指や鼻の下にセンサーをつけて、いびきや呼吸の状況を調べる検査です。
簡易検査の結果精密検査が必要と判断した場合は、ご相談の上入院による精密検査を手配いたします。
【治療】
治療法は、原因や症状の程度に応じて、下記のような方法のなかから選択されます。
CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)は、鼻に装着したマスクから圧力を加えた空気を送り込むことによって、気道の閉塞を予防して無呼吸を防ぐ治療法です。中程度以上の症状の患者さんにとても効果的です。現在、最も重要な治療法として、日本でも広く普及しています。
肥満が原因で気道が閉塞している場合には、減量のための食事や適度な運動が大切です。
症状が改善するほどに減量するには、時間が必要ですが、他の治療法を行いながら生活習慣を改善して減量に努めましょう。
アゴの位置を固定するマウスピースを作り、睡眠時にこれを装着します。軽度の症状の患者さんに適応します。マウスピース作製には専門の歯科医をご紹介いたします。
気道が閉塞する原因がアデノイドや扁桃肥大などの場合は、摘出手術が有効な場合があります。
また、アレルギー性鼻炎など鼻づまりによる睡眠時無呼吸症候群に対しては、鼻から空気を送り込むCPAP法を利用することができないため、鼻閉の改善手術を行うことがあります。
在宅酸素療法は、病状は安定しているものの血液中の酸素が不足している方が、ご自宅などの医療機関以外の場所で、「酸素供給機」を設置し、必要時あるいは24時間にわたり、不足している酸素を吸入する治療法です。
酸素は、呼吸によって体内に取り込まれます。したがって呼吸機能がうまく働かないと、体の中に酸素を十分に取り込めなくなってしまいます。
このような状態を呼吸不全と呼び、病状が1ヶ月以上に及ぶ場合を慢性呼吸不全と言います。慢性呼吸不全を引き起こす主な呼吸器の病気には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺結核後遺症、間質性肺炎、肺がんなどがあります。
【目的】
在宅酸素療法は、息切れなどの自覚症状を改善し、慢性呼吸不全患者の生命予後の改善などに役立ちます。また家庭での酸素投与によって在宅療養や社会復帰を可能にし、生活の質(QOL)を高めます。酸素吸入により心臓をはじめとする諸臓器を低酸素状態から守り、寿命を延ばす効果も実証されています。
【保険適用について】
下記の条件を満たした場合、在宅酸素療法には健康保険が適用されます。
対象疾患
群馬県内では、平成29年現在、計14のがん診療連携拠点病院、がん診療連携推進病院を中心にがん診療を行っています。がん治療後の診察、検査スケジュールを記載した診療計画書にしたがい、がん診療連携拠点病院と地元の医療機関とで連携して診療を行うシステムのことを「地域連携クリティカルパス」といいます。
群馬県では、県内医療機関すべてで共通に使え、効率的な診療が行えるように、5大がん(胃がん、大腸がん、肺がん、肝がん、乳がん)の地域連携パスを県内で統一しています。
当院では、地域連携パスを利用して、根治手術などで病状の安定している肺がんの患者さんのフォローを行っています。診療計画書に従い診療を行い、もし病状に変化があれば、ただちにがん診療連携拠点病院に紹介します。
肺がんの治療方針は、主治医をはじめとした治療スタッフで決定されます。治療ガイドラインにより、推奨される治療がありますが、患者さんの希望に沿わない場合もまれではありません。
そのような場合、第二の意見を求め、参考にすることは、患者さんの権利として認められています。世間一般に、「セカンドオピニオン」として、積極的に周囲の意見を求めることが推奨されています。
検査、治療に関与していない専門家に意見を求め、方針が合致していれば主治医の治療方針に沿い、方針が異なれば検討を行うことで、治療への意識も高まることが期待されます。
当院では、治療方針に対し、適切か否かの意見を求める患者さん、ご家族に対し、第三者の立場として、豊富な経験をもとに、適切なアドバイスをしています。
通院している病院の主治医に、紹介状、情報提供(CT、PET, 検査データなど)を依頼してください(特に、画像がないと、適切な判断ができません)。
また、当院の診療時間内に、電話でセカンドオピニオン外来の予約を入れてください。
紹介状及び検査データの読影、十分にお話を聞き、納得できるまでの説明、また、紹介元への詳細な返事作成など、通常外来ではできないため、診察時間外(12−15時、要相談)に予約時間を設定いたします。
また、保険適応外の診察のため、30分5、000円、1時間10、000円の診察料金をお願いしています。
自分で抱え込まず、セカンドオピニオンを受けてみてください。